教員免許更新講習2018

今年も教員免許更新講習の時期がやってまいりました。

教員免許には有効期限があって、10年ごとに更新しなければ教員資格を失ってしまいます。更新するためには、大学で講義等に参加し、所定の単位を取得しなければなりません。法律で決まっている以上、誰も逃れられません。更新を怠って教員免許の期限が切れ、職を失ったり、黙って仕事を続けているうちにバレて大変なことになってしまったニュースを毎年のように聞きます。

そして私は、免許を更新するために集まった先生方の前で講義をしてきたのでした。恐れ入ります。先生方は、たいへんお忙しいところ、貴重な時間を捻出して講習に参加していただき、お疲れ様でした。有意義な時間となっていれば幸いであります。

個人的には、この免許更新講習、どうかなあという気がしています。というのは、教育公務員特例法に定められた「研修」との整合性が計られていないことが明らかだからです。教員資格に関する法令全体が合理的に整備されていないからです。要するに、立法を司る人々の怠慢が反映された制度だと思っているからです。
とはいえ、いったん法律で決まった以上、ソクラテスに倣い、国民として法律に粛々と従うことについては吝かではありません。立法関係者の不勉強は明らかではありますが、いったん法律が定まった以上、免許更新講習を有意義な時間にするのが我々の役目です。主観的には、けっこう頑張ってるつもりです。

ということで、「教育の最新事情」のテーマとして、「社会に開かれた教育課程」と「カリキュラム・マネジメント」について話をしてきました。これらは昨年出た新学習指導要領の目玉キーワードとなっており、「最新事情」の看板にふさわしいものと思ったからであります。話の内容は、まあ、上記リンク先で示してある見解に沿って行いました。

とはいえ、参加する先生方から集めた事前アンケートを見たところ、総じて関心が高かったのは、「特別支援教育」であったり「特別の教科道徳」の具体的な姿であったりと、やはり各先生方の目の前に迫った喫緊の実践課題に対してでした。「社会に開かれた教育課程」と「カリキュラム・マネジメント」は、差し迫った喫緊の実践課題というよりは、ちょっと遠回りで原理的な話になるからでしょう、あまり関心を集めていないようでした。このあたり、新学習指導要領を出して鼻息が荒い文部科学省の姿勢とは、意識にちょっと開きがあるような気がしていたところです。

そんなわけで、様々な立場の現場の先生方と直接触れあうことができる貴重な機会を最大限に活かし、個人的な興味関心からアンケートをとってみました。「社会に開かれた教育課程」と「カリキュラム・マネジメント」という概念が、どれくらい現場に浸透しているかどうかを確認しようという試みでありました。結果だけ示すと、「社会に開かれた教育課程」については7割くらいの先生方が、「カリキュラム・マネジメント」については半分くらいの先生方がピンと来ていない様子でした。また校内研修においても周知徹底されている様子は伺えませんでした。「カリキュラム・マネジメント」については一部の学校で徹底的な研修によって周知されている様子も伺えましたが、全体として意識が高まっているわけではないということが分かりました。
まあ、「特別の教科道徳」とか「特別支援教育」など、現場の先生方は差し迫った緊急の課題にまず対応しなければならないので、学習指導要領の理念の浸透はこれからといったところでしょう。

そして、授業後に回収したご意見・ご感想を丁寧に読みました。先生方が、目が回るほどの忙しさの中、子供たちのことを考えて頑張っていることがよくわかりました。先生方が、苛酷な環境で時間に追われながらも、いかに目の前の子供たちのことを真剣に考えて日々の仕事に取り組んでいるか、改めて頭が下がる思いです。

アンケートでは、「マネジメントの観点から学校運営が改善しているかどうか」も聞きました。一部の学校ではありますが、かなり意欲的に「働き方改革」を進めていることを確認できました。たいへん心強いことです。しかしまだまだ大半の学校では形になっていないようです。先生方の激務が少しでも緩和され、子供たちに向き合う時間を確保できるよう、関係者が知恵を出し合い、良い方向に改革が進んでいくことを願います。私も、少しでも力になれればと思います。

貴重な時間を捻出して参加してくれた先生方に対して、私の話が少しでも参考になっていれば、幸いです。先生方、たいへんおつかれさまでした。