流通経済大学「教育学Ⅰ」(9)

■新松戸キャンパス 6/29(金)
■龍ケ崎キャンパス 6/18(月)

前回のおさらい

・モラトリアム。
・大人と子供の境界線。生理的早産。
・むかし、子供はいなかった。

イニシエーション

・イニシエーションとは:日本語では「成人式」や「通過儀礼」とも呼ばれる。一人前の共同体(ムラ)のメンバーになるために、全ての若者が突破しなければならない試練。日本だけではなく、世界全体に共通して見られる。
・イニシエーションの必要性:肉体的に一人前の条件を揃えつつある(第二次性徴、14歳~15歳くらい)とき、精神的にも一人前になる必要がある。
・イニシエーションの内容:「死」と「再生」を象徴する。一人前の共同体(ムラ)メンバーになるために、家族と分離(親離れ、子離れ)し、ムラ全体の子供として再び生まれなおす必要がある。

若者組……学校がない世界での人間形成

・一人前になるために、年齢別集団へ加入して、様々な知識や技術を身につける。(女性の場合は「娘宿」など)
・「家族」でも「学校」ではない場所で、親や先生ではない人から、知識が伝達される。
・若者組の役割:集団労働力の提供、祭礼や村芝居の執行、消防・警察、性や結婚の管理など。
・近代の学校と決定的に異なるのは、「死」と「生=性」。

今と昔の子供の違い

・昔の子どもは活き活きしていた? →子どもが変わったわけではなく、子どもを取り巻く環境のほうが変化したと考えれば、理解できる。
・昔のお父さんは尊敬されていた? →お父さんが変わったわけでも、子どもが変わったわけでもなく、労働と教育のあり方が変わったことを考慮すれば、理解できる。
・少年犯罪は増加した? →増えてもいないし、凶悪化もしていない。しかしどうして増えているように思ってしまうのか?
・どうして「形成」ではなく「教育」が必要となったのか? →親と一緒の仕事をするなら「形成」で問題ないが、別の職業に就く場合には「形成」はむしろ意味がない。

復習

・「イニシエーション」の理念と実際の在り方について、現在の教育の在り方と比較しながら理解しておこう。

予習

・江戸時代の日本の教育について調べておこう。
・ヨーロッパ近代の歴史をおさらいしておこう。

参考文献

ファン・ヘネップ『通過儀礼』
文化人類学の観点からイニシエーション(通過儀礼)を捉え、人生の節目で危機を乗り越えるための儀礼と理解し、越境の過程を「分離→過渡→統合」という図式で理解する。古典的名著。

佐野賢治『ヒトから人へ』
「大人になる」ために昔の人々が行っていた伝統的な習俗を、「一人前」という視点から描き出すエッセイ集。高度経済成長後に失われた伝統的な人間形成の在り方について考えさせられる。