教職基礎論(栄養)-7

▼短大栄養科 6/9

前回のおさらい

・自由、理性、自己実現。

学習指導

・教育基本法によれば、教育の目的は「人格の完成」でしたが、具体的な先生の仕事は「学習指導」と「生徒指導」の2つに大きく分けられます。
*学習指導:先生の仕事の一つは、生徒児童に学力を身につけさせることです。
・「義務教育」とは何ですか? 誰の誰に対するどのような義務でしょうか。子供が教育を受ける義務ではないことに注意しましょう。子供が持っているのは、教育を受ける権利です。
・「普通教育」とは何ですか? フツーの教育ということではないことに注意しましょう。

【日本国憲法】第26条
すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
【教育基本法】第5条
国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。
3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。
4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。

・普通教育の内容は、学校教育法という法律に定められています。

【学校教育法】第21条
義務教育として行われる普通教育は、教育基本法 (平成十八年法律第百二十号)第五条第二項 に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一  学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二  学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三  我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四  家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五  読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六  生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七  生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八  健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九  生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十  職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

→たとえば「家庭科」という教科が存在する根拠は、第21条の「四」にあるように読めます。が、注意したいのは、家庭科の仕事が「四」に限られないことです。たとえば班のメンバーと協力しながら目的に向かって調理実習を成功させることは「一」に関わりますし、調理実習の際に材料を正確に計量することは「六」に関わりますし、加熱することで卵が固まったりバターが溶けたりすることを理解するのは「七」に関わりますし、食事が健康に果たす役割を理解することは「八」に関わりますし、盛り付けを綺麗にすることは「九」に関わってきます。

・「学力」とは何でしょうか? 法律で定義されていることに注意しましょう。

【学校教育法】第30条
小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
○2  前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

学力の三要素:(1)基礎・基本(2)活用(思考力・判断力・表現力)(3)態度。

学習指導要領

・文部科学省が公示している教育課程の大綱的な基準で、先生の仕事の一つである「学習指導」は、この文書に従って行います。教育基本法と学校教育法を踏まえて構成されています。各学校は学習指導要領をもとに教育課程を定めます。

学習指導要領の構造

・第1章 総則
・第2章 各教科
・第3章 特別の教科 道徳
・第4章 総合的な学習の時間
・第5章 特別活動

・「各教科」と「特別の教科 道徳」と「総合的な学習の時間」と「特別活動」は、それぞれどのように異なっているでしょうか。
(1)教科書:「各教科」と「特別の教科道徳」では、必ず教科書をつかわなくてはいけません。「総合的な学習の時間」と「特別活動」には教科書は必要ありません。
(2)評価:「各教科」と「特別の教科道徳」では、必ず評価を行わなくてはなりません。「総合的な学習の時間」と「特別活動」では評価を行いません。ただ、「各教科」は数値で評価を行いますが、「特別の教科道徳」では数値による評価を行ってはいけません。
(3)教員免許:「各教科」では教科に対応した教員免許を持っていない者が授業を行うことはできませんが、「特別の教科道徳」や「総合的な学習の時間」や「特別活動」は、教員免許を持っていれば教科に関係なく指導に関わることができます。

生きる力と知識基盤社会

生きる力:知徳体のバランスがとれた力をつけることです。
知識基盤社会:21世紀は、新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す、いわゆる「知識基盤社会」(knowledge-based society)の時代です。
(1)知識には国境がなく、グローバル化が一層進みます。
(2)知識は日進月歩であり、競争と技術革新が絶え間なく生まれます。
(3)知識の進展は旧来のパラダイムの転換を伴うことが多く、幅広い知識と柔軟な思考力に基づく判断が一層重要になります。
(4)性別や年齢を問わず参画することが促進されます。

文部科学省【現行学習指導要領の理念】
社会の構造的な変化の中で大人自身が変化に対応する能力を求められている。そのことを前提に、次代を担う子どもたちに必要な力を一言で示すとすれば、まさに平成8年の中央教育審議会答申で提唱された「生きる力」にほかならない。

復習

・義務教育や普通教育という概念について、おさらいしておこう。
・『学習指導要領』の働きと意義について押さえておこう。
・「生きる力」について説明できるようにしておこう。

予習

・いわゆる「ゆとり教育」について、自分なりに調べておこう。