教育学Ⅱ(龍ケ崎)-11

■龍ケ崎キャンパス 12/18(月)

前回のおさらい

・「対話的に考える」とはどういうことか。
・対話的に考えることで、自分を客観的に見られるようになり、自分が間違っていることに気がつける。
・ソクラテス対話法の、「無知の知」「産婆術」「汝自身を知れ」。
→適切な問いを投げかけることで、相手の答えを発展させていく。
・「人間にはスポーツをする余裕があるが、動物は生きるために精一杯で余裕がない」という命題の吟味。
・狩猟採集から農耕文明へ発展することで余裕が生まれた。
・戦争や宗教から切り離され、「何かのため」に行うのではなく、「それ自体のため」に行うところから、スポーツができた。

これまでの作業の振り返り(4)

メタ的に考える

・これまでやってきたことは、一つは「メタ的に考える」ことのトレーニングである。
・単に「メタ的に考えよう」と言っても身につかないので、実際に作業を行いながら具体的に考えてみた。
・「人間とは何か?」という問いは、「メタ的に考える」うえで、極めて有効に働く。メタ的な問いだからである。
・誰もが「自分は人間である」ということを認識しているが、どうしてそのような認識ができるのか。それを考えるためには、「「自分が人間であると考えている」ことを考える」ことが必要となってくる。
・しかし「人間とは何か?」という問いはレベルが高かったようなので、「スポーツとは何か?」という問いに変更した。「「自分はスポーツをこう考えている」ということを考える」ということ。

「メタ」とは?

・ギリシア語で言う「高次な~」「超~」という意味。
・「メタ認識」とは、自分自身を認識するときに、自分の思考や認識そのものを対象として客観的に思考し認識すること。思考に対する思考。認識に対する認識。
・単に物事を認識するだけでは、それが正しいか間違っているかは判断できない。また、さらに良いものに改善していけるかどうか判断できない。
・自分の思考や認識が正しいか間違っているかを判断するためにも、一歩引いたところから、自分の思考や認識の全体像を視野に入れて、客観的に考える必要がある。ここから、間違っているところや自分に足りないところを認識して、自分の思考や認識をさらに発展させることができる。
・「メタ認識」をしない者は、自分が間違っているところや、自分に何が足りないかを認識することができず、自分で自分を成長させることができない。
・「メタ認識」をするということは、批判的な考え方ができるようになると言うこと。

指導者として気をつけること

・「メタ認識」のないところに成長はない。
・「自分の思考や認識」を自分自身で客観的に思考したり認識したりできるように、ノートをつけさせる。
・自分が考えたことや理解したことをノートに書くことで、自分自身の考えを「外」に出して客観的に見つめ直すことができるようになる。

「授業」とは何か?

・「こんなものは授業ではない」と主張できるためには、「授業とは何か」が分かっていなければならない。
・どうして「授業とは何か」が分かっているといえるのか?
・教育学について長年研究を積み、実際に授業を行ってきた学者と、単に受け身で授業を眺めてきただけの者とで、どちらが「授業」について詳しく知っているのか。
・それにも関わらず、どうして「自分のほうが授業について知っている」などと主張することが可能なのか?
・あなたが思っている「授業」とは、本当に「授業」と呼ぶに価するのか。
・「メタ認識」ができないと、自分の視野の狭さに気づかない。

命題の吟味

人間は勝利や名誉を求めるが、動物は求めない。

・人間はどうして「勝利」や「名誉」を求めるのか。どうして「競争」するのか。
・動物や植物は「競争」をしていないか?→生存競争。
・「生存競争」とは何か?→種の生き残りをかけた競争。
・進化論の考え方。「適者生存」とは何か? →その環境に最も適した個性を持ったものが最も繁栄する。
・「突然変異」とは何か? →有性生殖によって様々な個性を持った変種が生み出される。
・動物や植物の生存競争は、「突然変異」と「環境への適応」によって決まる。重要なことは、ある一つのモノサシで勝負が決まるというわけではないということ。「個性」が「環境」に適応できるかどうかが問題。
・人間の生存競争の勝敗は何によって決まるのか? →動物や植物の「突然変異」は自然に任せるしかないが、人間は自分の努力や工夫で変異することができる。人間だけが自分で自分を変えることができる。

指導者として気をつけること

・勝負は一つのモノサシでつけられるのではなく、多様な個性の間の競争である。
・自分の「持ち味」や「長所」や「個性」を理解する。
・自分の武器は何で、それをいつどこでどのように使えば一番威力を発揮するのか、自覚する。
・自分の武器を磨いておくこと。他の動物や植物とは違って、人間は自分で自分を変えられることを自覚する。