【要約と感想】齋藤孝『教育力』

【要約】教育を行う立場の人に向けて書かれた、エッセイ集。

【感想】まあ、教育を行おうとする者に普遍的に求められる熱意や情熱を誰かと共有したいという向きには、勇気をくれる本だとは思う。授業を「祝祭」として受けとろうという話などは、実践的な姿勢として役に立たないということはない。「あこがれにあこがれる関係づくり」というテーマは、ソクラテスにも通じるものであって、悪くない。私としても、祝祭としての授業を燃焼させようという情熱においては、人後に落ちないつもりではある。

が、著者の他の本にも通じて感じることなんだけど、「近代」という時代が持つ特徴や性質についての反省というか洞察が欠けていて、「自由を強制する」という近代学校の働きを無自覚・無前提に肯定して話を進めるため、「塾」や「学力」や「ゆとり教育」に関する記述など、どうだかなあという感じを受ける。

とはいえ、誰にも読まれない論文を書きながら無給・無評価で戦い続けたエピソードには、涙を禁じ得ない。私も自分を信じて頑張ろう。

斎藤孝『教育力』岩波新書、2007年