【要約と感想】田村知子『カリキュラムマネジメント』

【要約】社会が激しく変化する昨今、カリキュラムをマネジメントしないと、学校はやっていけません。初心者でも簡単に始められるカリキュラムマネジメント分析シート付き!

【感想】極めて具体的で実践的なチェックシートもついていたり、先進的な実践例のどこがどう凄いかも丁寧に解説されていて、さらに理論的な背景もコンパクトに説明されており、どうして今の学校にカリキュラムマネジメントが必要なのかにも現実的な説得力があり、「いっちょカリキュラムマネジメントでもやってみるか」と思っている向きにはとても参考になるのではないか。さくっと読めるし。

で、カリキュラムマネジメントを省略して「カリマネ」と呼ぶことがあるわけだが、本書で「借り真似」にならないようにと釘を刺しているところは、ちょっと笑ってしまった。なるほど。まあ、「借り真似」できるところは積極的に借りて真似するのは別に悪くないことで、要は目の前の子供のニーズをしっかり掴んで適切にアレンジできるかどうかが重要なわけだが。

とはいえ気になることは、やはり教育の目標である「人格の完成」という概念とカリマネとの関連性である。本書にも一ヶ所だけ「人格の完成」に触れられている。具体的には「学校のミッションは本来、各家庭・地域からあずかる子どもたちを、人格の完成と自立した社会の一員としての資質形成をめざして、よりよく成長させることです。そのための主たる手段が授業を中心とした教育活動であり、その集積がカリキュラムなのですから、適切かつ効果的なカリキュラムを編成・実施することは学校の第一の責務です」(11頁)と書いてあるが、本当だろうか? この文章だけでは、カリキュラムマネジメントと「人格の完成」という概念が内在的にどう関連しているかはさっぱり分からない。教育理念不在あるいは教育理念外部丸投げで「学力向上」をひたすら目指す営みだという感想が強くなりつつある。理念不在でいいならそれでいいとはっきり宣言してくれればスッキリするのだが、お題目だけ「人格の完成」に触れるところがモヤモヤ感を増幅させるのであった。カリキュラムマネジメントして社会に開かれた教育課程を編成して資質・能力を身につけさせることが、本当に「人格の完成」と呼ぶに相応しい営みなのか、きちっと説明している論理を見たことはない。まあ、それは本書に要求するべきことではなく、別の人(たとえば教育原理論の専門家たち)がしっかりやるべき仕事ではあるけれども。

まあ、カリキュラムマネジメントに実践的な関心がある人にとって具体的にも理論的にも分かりやすい本であることには間違いがないと思う。

田村知子『カリキュラムマネジメント―学力向上へのアクションプラン』日本標準ブックレット、2014年