教育の基礎理論-3

前回のおさらいと補足

・「子供/大人」の境界線が、今と昔では異なっていた。

「形成」と「教育」の違い

・「教育」はなかった。
・「学校」がなかったころも人々は人間形成を行っていた。「教育」と異なる形態の人間形成のことを専門用語で「形成」と呼ぶ。

形成と教育の違い

カテゴリー形成(前近代)教育(近代)
【何を習得するか】カンとコツ知識と教養
【どこに修めるか】身体
【どうやって伝えるか】行動文字
【規範意識】恥じ・しつけ公共性・道徳
【根拠】経験と仕来り科学と合理性
【指導する人】村落共同体資格を持った教師
【見える光景】背中
【労働との関係】労働と一体労働と分離
【祭祀との関係】祭祀と連続祭祀と分離
【遊びとの関係】遊びと連続遊びを排除
【カリキュラム】実践的・偶然的意図的・計画的
【行政】自治中央集権
【大人の条件】一人前人格の完成
【人間像】身分・地域の特殊性普遍的人間

・徒弟制。ギルド。親方-弟子の関係。疑似親子関係。
・昔の子どもは活き活きしていた? →子どもが変わったわけではない。子どもを取り巻く環境のほうが変化したと考えれば、理解できる。
・昔のお父さんは尊敬されていた? →お父さんが変わったわけでも、子どもが変わったわけでもない。労働と教育のあり方が変わったことを考慮すれば、理解できる。
・どうして「形成」ではなく「教育」が必要となったのか? →お父さんと一緒の職業に就くなら「形成」で問題ないが、別の職業に就く場合には「形成」はむしろ意味がなくなる。

イニシエーション

・日本語では「成人式」や「通過儀礼」とも呼ばれる。
・大人の仲間入りをするために、全ての若者が突破しなければならない試練。日本だけではなく、世界全体に共通して見られる。
・肉体的には大人になっても、精神的に大人になる必要がある。
・「死」と「再生」の象徴。

若者組……学校がない世界での人間形成

・家族との分離(親離れ、子離れ)と、年齢別集団への加入。女性の場合は「娘宿」など。
・「家族」でも「学校」でもない場所における知識の伝達。
・集団労働力の提供、祭礼や村芝居の執行、消防・警察、性や結婚の管理。
・「死」と「生=性」。

復習

・「形成」と「教育」の違いを具体的に説明できるかチェックしよう。
・イニシエーションの具体的な例を調べてみよう。

予習

・ヨーロッパの歴史をおさらいしておこう。