【要約と感想】プラトン全集1

【要約】「エウテュプロン」「ソクラテスの弁明」「クリトン」「パイドン」を所収。ソクラテスが裁判に訴えられてから、裁判を経て、死に至るまでの作品がまとまっている。

【感想】「エウテュプロン」は、ことばの真の意味を求めて最終的にアポリアに至る初期対話篇の構成をとてもわかりやすくしめしている作品だと思う。「弁明」と「クリトン」も、ソクラテスのキャラクターを素朴に伝えているように思う。
一方「パイドン」は、それに対してプラトン思想の集大成的な感じもする。自己同一性に対する執着とか、想起説とか、「魂の世話」に一直線に向かっていく初期対話篇には存在しなかった趣が含まれている。眼鏡っ娘論的に含蓄が深いのは、自己同一性に徹底的にこだわる「パイドン」のほうだ。

『プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン』岩波書店、1975年