【要約と感想】林竹二『教育の根底にあるもの―決定版』

【要約】日本には教育がありません。学校が子供たちを死に追いやっていることを、教師は自覚すべきです。教師が権力性を放棄しないと何も変わりません。教育とは何かを教え込むことではなく、子供の中に眠っている宝物を呼び覚ますものであり、授業とは自分が成長する実感と喜びを伴ったものでなければなりません。(1983年の講演記録)

【感想】子供たちの写真が衝撃的。授業を受ける過程で、みるみる表情が変わっていく。外在的な知識を与えられているのでは、こうはならない。私の授業では、最初から多くの学生が机に突っ伏して表情すら見えないが。そもそも授業とは、子供の中にある可能性を呼び覚ますものでなければならない。借り物の言葉を溜め込むのではなく、心から本当に分かったと思えるのが、真の授業だ。そうするためには教師は自らの権力性を意識し、廃棄しなければならないと言う。それが難しい。「教えなければいけないこと」は、教師たちの思いとは関係なく、上から降ってくる。教職課程でも「コア・カリキュラム」なんてものが上から降ってきた。そんなことで本物の教育になるのかという反省もなしに。

あと、特殊学校の教育に関する対談の中で、障害児の人間的発達に対する感動的な実践とともに、それに携わった先生に対するカウンセリング的対話が衝撃的だった。なかなか恐ろしい本だ。

林竹二『教育の根底にあるもの―決定版』径書房、1991年