流通経済大学 教育学Ⅰ(12)新松戸

▼新松戸キャンパス 7/7(金)

前回のおさらい

・教育権の構造。

産業革命と階層分化

・「産業革命」とは何か?
自給自足の世界から、分業の世界へ。
・土地利用法の変化。生活(衣食住)のためにあらゆるニーズを土地から生産→換金するために商品価値のある単一作物を生産。
・余談:生活(衣食住)の市場化。「家事」とは何か? 市場化されないものなどあるのか?
・年貢(モノ中心経済)から賃金労働(お金中心経済)への変化。
・エンクロージャー(囲い込み)。農村からの人口流出。労働力しか売るもののない人々(→労働者)の発生。
・労働力を購入するのは、工場。大量の労働力を必要とする産業。急速な都市の形成(たとえばマンチェスターやリバプール)。腐敗選挙区問題。都市スラム問題。浮浪者問題。
・ヒトとカネとモノの大量移動と流動化=原始蓄積。「二つの国民(資本家と労働者)」の形成。
・産業革命が進行すると、独立自営農民がいなくなり、資本家と労働者に分解していく。→階層分化。

分業と個性

・分業によって生産性が格段に上がる。アダム・スミス。
・分業が促進されるほど、個性が意味を持つ。社会に人材を送り出すとき、それぞれの特性に応じた持ち場に就けることができれば、社会全体の効率が上がる。適材適所。
・この場合の「個性」とは? 「人格の完成」に関わる「個性」なのか?
メリトクラシー:身分や血筋の高い者が社会を統治する体制を否定する。出自に関係なく個人の持っている能力によって地位が決まり、能力の高い個人が社会を統治する。
学歴主義:学校の勉強に高い適応能力を示した個人が、きっと社会一般でも高い能力を発揮するだろうと期待する態度。しかし、学校の勉強に高い適応能力を示す個人が、一般社会で高い適応能力を示すとは限らないということは、広く気がつかれている。それにも関わらず、どうして学歴主義が説得力を持つのか?→「隠れたカリキュラム」及び「文化的再生産」参照。

モニトリアル・システム

ベル・ランカスター法:助教法。大勢の生徒に対する一斉授業方法。教師はまず成績優秀な学生に教え、優秀な学生(モニター・助教)が一般学生に教える。
・「人格の完成」を目指すというよりも、工場労働で必要となる必要最低限のリテラシーとモラルを身につけることを目指す。

隠れたカリキュラム

・カリキュラム:教育目的を達成するために、文化財から選ばれ、教育意図を持って計画的に配列された、教育内容。
・正式のカリキュラム:学校や教師が教えていると公式に表明されている教育内容。学生や保護者や世間にとって、学生が学校で身につけることを期待している学習内容。
・隠れたカリキュラム:教師は教えていると思っていないし、保護者や世間も学校でそれを教えているとは思っていないにもかかわらず、いつのまにか学生たちが身につけている暗黙の内容。
・知識や考え方、行動様式が、意図されないまま、いつのまにか教えられている。
・学校で身につける意識と行動様式=労働者として必要な意識と行動様式。(他に性別役割分業に関する意識等)

文化的再生産

・学歴の高い親の子どもの学歴も高くなりやすいのはなぜか?
・遺伝=生物的再生産か、環境=文化的再生産か?
文化資本:支配階級の習慣や考え方を教育システムが評価することにより、もともとそういう習慣を身につけていた層が高い学歴を得て、高い階級へと再生産される。

近代教育のさまざまな相

(1)リテラシーの教育:自分自身の能力や可能性を開発するために必要となる知識や技術を身につける。伝統的な世界で生きていくためには必ずしも必要ではないが、世界が大きく変化するときには身につけないと死んでしまうような基本能力となる。文字の読み書き能力や、コンピュータを使う能力など。
(2)民主主義の教育:民主主義社会の構成員にふさわしい、自由で平等な個人として人格を完成する。市民権を行使する(契約行為の主体となることができる)ために必要な知識や教養を身につける。(自由権としての教育)
(3)義務教育:全ての子どもが自律した個人となれるよう、国家の援助によって平等な教育機会を保障する。(社会権としての教育)
(4)産業革命の教育:経済的な成長を支える優秀な労働者を供給するために、低予算かつ大量に人材を養成する。その一方で、分業体制に対応し、産業界が必要とする多様な人材を供給するため、特性と長所を見極めた育成と配分を行う。それぞれのステータスに応じた科学教育を伴う。

復習

・産業革命に伴って生じた教育の変化について、「メリトクラシー」などの言葉と一緒に押さえておこう。

予習

・現代日本の教育が抱える諸問題について、自分なりに考えてみよう。